これは元々クラッシュ加工された部分が
着用の過程で劣化して横糸が切れてしまった状態です。
クラッシュ加工物は新しい時点でユーズド感を出すために
あらゆる加工が施されます。
基本は酵素系の溶剤で生地を柔らかくします。
柔らかくというと聞こえがいいのですが
要は酵素剤にデニムを漬け込んで繊維を痛めつけ腐らせているわけです。
そして塩素系の溶剤で部分的な色抜き
サンドブレスター(砂を勢いよくデニムに噴射してダメージを与えます)
その他グラインダーや鑢など、驚くほど手間をかけてダメージ感を出します。
ひところ昔ならタンブラー(要は大型洗濯機)に軽石を入れて水洗いする程度で
堂々と「ユーズド加工」って事でしたが
昨今はホントに履き込んだユーズド感と
見分けのつかない物も結構あります。
今回ご依頼のデニムは
ブラックデニムの顔をしているのですが
横糸はインディゴ色に染められている特殊なジーンズです。
このような場合は裏側に当てる生地もインディゴ色的な色合いのものを
選ぶ事が重要です。
「穴になった」「裂けた」「将来的に破れそうだ」などというすべての場合
一般の洋服直し屋さんなら表のデニム色(この場合ならブラック系)の
当て布を選んでしまう傾向にあるようですが、
デニムの修理の場合は、「横糸の色が何色なのか」が重要です。
ほとんどのジーンズは愛着していると
細い経糸が先に劣化して横糸が後に残ります。
そしていずれ横糸も劣化して切れるのですがその切れる前に
補強しておけばユーズド感を長く楽しめます。
そんなわけで修理の当て布は横糸と同系色にしておくことが
長い目でみると自然に仕上げるのには最適なわけです。
クラッシュ加工物のジーンズ等は
派手な穴になる前にリペアする事をお勧めします。